“属国”の証明!? ~ 米国が指示した判決を「合憲」根拠とする“不見識”内閣  成瀬 裕史

【不見識】見識に欠けること。判断力に乏しく、しっかりした考えのないこと。また、そのさま。[デジタル大辞泉]


■参考人の全員が「違憲」とした国会審議

 6月4日の衆院憲法審査会の参考人質疑で、全員が「違憲」を表明したことで、俄然かまびすしくなった、集団的自衛権行使の「合憲・違憲」論議。

 同日、菅官房長官は「違憲でないと言う学者も多数いる」と述べたが、10日の衆院特別委で菅氏が知っている学者は10人程度しかいないことを野党から指摘され、「数(の問題)ではない」と開き直った。
(なお、菅氏が具体的名前を挙げた3人の学者のうち2名は「徴兵制も合憲」と主張しているという…)


■「合憲根拠」は安保闘争時の“異例”判決

 11日の衆院憲法審査会では、自民党の高村副総裁が1959年の砂川事件最高裁判決を踏まえ「安保関連法案は合憲」とし、また、横畠内閣法制局長官も15日の衆院特別委で「集団的自衛権の行使は裁砂川事件判決にいう自衛権に含まれる」とし、集団的自衛権行使が「許容される」とした。

 しかし、そもそも砂川事件とは、1957年に米軍立川基地拡張に反対するデモ隊が基地内に立ち入ったことに対する裁判で、
60年の新条約締結を前に安保闘争が高まる59年3月の一審で「在日米軍は違憲」としたことで、
慌てた政府は検察をして二審の高裁を飛び越えいきなり最高裁に控訴する「跳躍上告」をし、
同年12月の最高裁の“スピード判決”でも、
「憲法9条は個別自衛権を否定していない」
「在日米軍は外国の軍隊であり(日本国の)戦力にあたらない」
「高度な政治性を持つ条約は、明白に違憲でない限り法的判断は下せない」とし、
“違憲”判決を破棄し一審に差し戻した。

 ここでの判決要旨は「①個別自衛権は容認、②在日米軍は外国軍であり合憲、③高度な政治性を持つ条約は法的判断外」ということで、どこをどう持ってきても「集団的自衛権は合憲」との根拠は見つからない。

 しかも、この最高裁判決の際、翌年の安保条約改定への影響を懸念した当時の米国駐日大使が、日本の外相に跳躍上告を促したり、最高裁長官に年内に在日米軍合憲の判決を出すよう要求したことが、機密指定を解除された米公文書から明らかになっている。


■戦後外交史上“最重要事項”判断当事者の「不見識」

 「集団的自衛権の行使容認」という、「サンフランシスコ条約」「安保条約」と並ぶ、我が国の戦後外交史上の、“最重要事項”を論じている際に、
よりによって「他国の命令」による“いびつ”な判決を「合憲」の根拠としようとする、我が国の現政権・政府の「不見識」さに、私は「途方もない憤り」を禁じえない…。

(自らが選んだ参考人が国会で「違憲」を表するという、現政権の“体たらく”も、笑い話では済まない感もあるのだが…。) 


■憲法よりも大切な「日米防衛協力」!?

 しかし、そもそも、今回の「集団的自衛権行使容認」をゴリ押しでも何でも容認しなければならない必要性が、
この4月に改定された「ガイドライン」(日米防衛協力のための指針)の「実効性確保」のためにあるというならば、「米国大使の指示」による判決を「根拠」とする与党・政府の「ご見識」も、解らない訳ではない…。

「新ガイドライン」には、ⅣのD「日本以外の国に対する武力攻撃への対処行動」には、
「1.アセットの防護(筆者注:グレーゾーンでの米軍支援)、2.捜索・救難、3.海上作戦(機雷掃海)、4.弾道ミサイル攻撃に対処するための作戦、5.後方支援」という「おなじみの文言」が列挙されている…。

 この国の政権担当者の最優先事項が、「全ては米国・米軍のため」というのであれば、かの国の支配下にあろうメディアに感化された「属国民」の多くは、この「新ガイドライン」のための「合憲判断」に、至極納得してしまうのかもしれないが…。


  •  「検証・法治国家崩壊 ー砂川裁判と日米密約交渉』(創元社) --- 八代 勝美 (2015/06/23 07:09:37)

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  • 最終更新:2015-06-21 13:07:27

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