「脱原発」派の“当惑”  成瀬裕史

■都知事選が「脱原発」を問う場に!?

 1月14日、細川護熙元首相は、小泉純一郎元首相との会談後、「原発問題」を掲げて都知事選に立候補する意向を表明した。

 「東京都知事を決める」選挙が、「原発の是非を問う」選挙に“変貌”した瞬間である…。

 この動きに対し、菅義偉官房長官が同日、すかさず「原発は国全体で取り組むべき問題であり、東京都だけで決める政策課題ではない」と言及した。

 これに先立ち、安倍首相も12日、外遊先で「エネルギー政策は東京都だけでなく、国民みんなの課題だ。都知事としての課題もバランスよく議論されるべきだ」と語っている。

 我が国の政権の“ツートップ”が揃って本件に言及していること自体、「脱原発」が都知事選を契機に“国政”問題化することを警戒しているという、何よりの「証左」であろう…。

 菅官房長官もさすがに「あとは都民がどう判断するかだ」と付け加えるのを忘れていないし、“都民”ではない私も「都民の選択」に言及するつもりも資格もないが、
我が国の“政権”そして“国民”の多くが、「原発問題」の視点から都知事選の帰趨に注目していることだけは、「間違いのない事実」であろう…。


■衰えていない小泉元首相の“発信力”

 「『原発ゼロでも日本は発展できる』というグループと、『原発なくして日本は発展できない』というグループの争いだ」

 これは14日、細川元首相との会談後の、小泉元首相の発言だ。

 小泉氏は、これに続き、「私は『原発ゼロで日本は発展できる』という考えに立っている」
「それが私の細川さんを応援する最大の理由だ」とも述べた。

 それにしても、何という「発信力」であろうか。

 小泉氏の持つ“言葉の魔術”により、「原発の是非」を都知事選の場で、見事に「争点化」してしまった感がある…。

 経済同友会の長谷川閑史代表幹事は17日、都知事選で「原発のみを争点にするのはいかがなものか」とし、
「化石燃料の輸入費が電力会社の経営を圧迫し、電気料金の値上げも避けられない」
「都民や都に事業所を置く者の負担を考えると、エネルギー政策は適正な見識・分析をもって納得が得られる形でやっていただきたい」と述べた。

 図らずも『原発なくして日本は発展できない』という立場を“表明”した格好となったが、
小泉氏の“陽動作戦”に「乗せられてしまった」感も否めない…。


■「原発立地地域」と「電力消費地域」との関係とは?

 長谷川経済同友会代表幹事の「都民や都に事業所を置く者の負担」という言葉は、そっくり「都に電力供給する原発を置く地域の負担」という言葉に跳ね返る。

 「首都・大都市の“繁栄”のためには、地方が“危険”に晒されても構わない」というのであろうか?
 「そこまでは思い及ばなかった」という弁解は、福島原発の事故の後では通用しない…。

 「『都民や都に事業所を置く者の負担』を考え、低コストな(?)原発を推進したいというのなら、どうぞ都内に原発を建設してください」とはならないのだろうか…。

 そうした場合、「万が一事故が起った場合、首都機能が消滅してしまい膨大な数の首都圏住民が避難を余儀なくされ、日本は壊滅状態になるので、それは出来ない」との反論もまた“正論”である。
 特に「万が一」の事故が“フクシマ”により「現実」となった今、「首都圏に原発建設」などという考えは、私も含め「ありえない選択」であろう…。

 そんな中、政府は今、「都民や都に事業所を置く者の負担」のため、また、「東電の原発事故補償の負担」のため、もしくは「東電を支える国(ひいては国民)の負担」のため「原発再稼動」を目論んでおり、その“本命”は新潟県の東電・柏崎刈羽原発と言われている…。

 しかし、その新潟県民を代表する立場の泉田新潟県知事は、柏崎刈羽原発の再稼動に「断固、反対」の立場を貫いている…。
 
 国全体の経済的利益のため、特定地域の安全、いわんや「生存権」の否定を強いるかのような政府の行為は、
「全体主義国家」「独裁国家」でしか「有り得ない」と思うのだが、
これは、現在、我が国「日本」で起きている“現実”なのである…。

 現在、市長選挙が行われている名護市の「辺野古」問題も、全く同じ構図なのではあるが…。
 

■“敵役”の「原発ゼロ」への「脱原発」派の“当惑”!?

 ところで、都知事選の「陰の主役」に躍り出た感のある小泉元首相であるが、首相時代に「小泉“構造改革”路線」のもと“非正規雇用”を推進し、我が国に「格差社会」を生み出すとともに、自衛隊のインド洋・イラク派遣の道筋を付けるなど、私を始め「脱原発」を支持する層にとっては、ある意味「敵役」の存在であった。

 そんな「ライト」で「親米」なイメージが強い小泉氏の「原発ゼロ」方針が、昨年の10月以降、メディアにも取り上げられるようになったが、結局は「原発推進」に向けた「使用済み核燃料処理施設」推進のための「くせ球」ではないか? と見る向きもあった…。

 しかし、14日の小泉氏の「私は『原発ゼロで日本は発展できる』という考えに立っている」との発言は、私を始め「脱原発」派が抱く“疑念”を払拭した。
 「小泉氏は本気だ!」と…。

 とは言え、首相としての訪米時、ブッシュ大統領の前で有頂天になってプレスリーの真似でおどけて見せた程(?)の「親米」な小泉氏の「原発ゼロ」には、「米国の事情」が必ず何処かに潜んでいる、と思ってしまうのは、私だけであろうか…?


■「原発ゼロ」は米国の“利益”!?

 先の大震災で原発事故が発生した当時、米国防総省は、原発からの被爆を避けるため、50マイル(80キロメートル)圏から避難するよう軍関係者に命じた。
 また、米政府も在日大使館を通じ、原発80km圏内に居住するアメリカ人に対し、圏外退避を勧告した。

 現在、3基が“メルトダウン”してしまったが、「不幸中の幸い」にも、未だ人間が「全く近づけない」状態には陥っていない。

 しかし、これをもって「コントロールされている」状態と考えるのは、安倍首相(と経産省?)以外にはいない(?)訳であり、メルトダウンした「核燃料の制御」はおろか、そもそもの「事故の原因」さえ、炉心に近づけず、つかめていない現在、福島第一原発と同じくGE社の「沸騰水型軽水炉」の柏崎刈羽原発を「再稼動」しようという安部政権・日本政府の方針は、米国政府にとってみると、全くもって“アンビリーバブル”な事態なのではなかろうか?

 「太平洋国家」たる米国は、「寄港地」を日本に求め、江戸時代からペリーによる「黒船」を派遣し、日本に「開国」を迫った。

 小泉“親子”の地盤・横須賀の米軍基地は、米海軍最大の規模と戦力を誇る「第7艦隊」の司令部がある。

 そんな米国が、先の大戦で取り戻した「寄港地」、そして、これから“TPP”により獲得しようとしている金融・保険・医療の「市場」を、原発「再稼動」により失うリスクを、「同盟国」に許すとは思えない…。

 ましてや、シェールガス革命により、火力発電燃料たる天然ガスの「一大輸出国」に躍り出る米国にとっては…。


■この際「白猫」であれ「黒猫」であれ…

 かつての中国の指導者・鄧小平氏は「白猫であれ黒猫であれ、鼠を捕るのが良い猫である」として“市場経済”を推進したが、
今回の小泉氏の「脱原発」「細川氏支援」で、この「白猫黒猫論」を思い出したのは、私だけではあるまい…。

 さしずめ、「新自由主義であれ何であれ、“原発を止める”のが良い勢力」といったところであろうか…。

 ひょっとして、「新自由主義であれ何であれ、“軍国主義復活を止める”のが良い勢力」となるのかもしれないが…。

 一庶民である私にとっては、消費増税やTPPによる、国やグローバル企業からの“重税”や“搾取”など、もちろん「願い下げ」であるが、それでも「原発事故」や「戦争」により、“住む場所”や“命”を失うよりは、まだ「まし」なのである…。

 東京都民にとって、私のような“部外者”が、都知事選にからめて「脱原発」勢力を応援することは、「はなはだ迷惑」な動きであるかもしれない…。

 しかし、万が一、原発再稼動で再び事故が発生し「住む場所を追われる」可能性がある者として、
万が一、憲法改正で軍国主義が復活し、権力に何ら係累も無く「自身や家族を兵隊にとられる」可能性がある者としては、

ある意味、「命を賭けた戦い」なのである…。


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  • 最終更新:2014-02-01 15:07:52

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