「落選運動」に本気な貴方へ ~2016参院選に向けて  成瀬 裕史

■「戦争法」撤回のための「落選運動」

 ついに成立してしまった「戦争法案」。

 現国会議員の勢力図からすると、ある意味、「予定調和な結末」だったのかもしれない。

 だとすると、この成立してしまった戦争法を「撤回」するためには、衆・参を通じた「与党優勢」の勢力図を塗り替えるしかない。

 そう、「落選運動」の展開である。


■一番近い国政選挙「2016参院選」

 衆院の解散が当面ないとすると、この先、一番最初に迎える国政選挙は、来年7月に予定される「参院選」である。

 「9.19」に安保法案に賛成した参院148議員の党派別内訳は、次のとおり。

自民系:114(2016改選49(選挙区37 比例12))
公明:20(改選9(区3 比6))
次世代:5(改選2(区1 比1))
元気:5(改選2(区1 比1))
改革:1(改選1(比1))
[計:148(改選63(区42 比21))]

 参院の定数は242議席なので、維新議員の今後の動向が不透明であるが、少なくとも法案に賛成した議席を「過半数割れ」に追い込むには、
次の参院選で、少なくとも28議席以上の「落選」が必要である。


■結構厳しい、次回参院選の情勢

 来年の参院選で改選されるのは、6年前、直前の菅総理の「消費増税」発言で失速したものの、政権交代を果たした民主党などの勢力が、まだ強かった当時のものである。

 また、民主党に失望した「浮動票」の受け皿となった「みんなの党」は、今はもうない。

 さらに、旧来から保守・自民党の支持層が厚い、中四国・九州などの西日本の県の1人区では、政権交代さなかのあの当時でさえ、自民が圧勝した区が少なくない。

 このような情勢のもと、自公など与党系を過半数割れに追い込むには、1人区での「野党共闘」(⇒候補者を一人に絞る)の徹底と、
東京を始めとする複数区での「風を呼び込める」「魅力と話題性に富む候補」の発掘・擁立が“必須”であろう。

 以下、選挙区ごとの「情勢」を見ていきたい。


■結構「保守的」な東京選挙区【最大3議席の奪取】

 2010年当時は都知事だった石原氏の「絶大な人気」(?)のためか、保守系と思われる候補が乱立していた。

[東京選挙区(議席数6)]
竹谷とし子(公)80万票、中川雅治(自)71万、松田公太(元気)65万、蓮舫(民)171万、小川敏夫(民)69万、
[(以下、落選)小池晃(共)55万、東海由紀子(自)29万、山田宏(日本創新)20万、小倉麻子(たちあがれ)12万、森原秀樹(社民)9万、海治広太郎(国民新)7万]

※次の選挙からの1増議席は共産が順当だろうが、自・公・元気議員への「落選運動」や「対抗馬」擁立で、最大3議席の上積みを目指す。


■東日本複数区 「風を呼ぶ候補」擁立で【最大5議席】

[千葉(3)]
猪口邦子(自)51万、水野賢一(み)47万、小西洋之(民)53万、[道あゆみ(民)46万]
※小野議員と次点とは1万票差、自民の“大物”への「落選運動」&「風を呼ぶ候補」で2議席奪取も可能か?

[神奈川(4)]
小泉昭男(自)98万、中西健治(み)78万、金子洋一(民)74万、[千葉景子(民)69万、畑野君枝(共)30万]
※1議席増を次点の民主。自公推薦の市長候補だった中西氏への「対抗馬」を共産党と候補者調整できるかで、2議席奪取も?

[埼玉(3)]
関口昌一(自)65万、西田実仁(公)59万、大野元裕(民)55万、[島田智哉子(民)54万、小林司(み)41万]
※もう一息で1議席奪取可能

[茨城(2)]
岡田広(自)49万、郡司彰(民)30万[長塚智広(民)20万、大川成典(み)15万]
※保守層の壁は厚いか?


■その他の議席増区「民主が取りこぼさずに」【最大5議席】

[北海道(3)]
長谷川岳(自)94万、徳永エリ(民)70万、[藤川雅司(民)56万、中川賢一(み)32万]
※民主王国(?)、1議席増を取りこぼしなく 

[愛知(4)]
藤川政人(自)91万、斎藤嘉隆(民)75万、安井美沙子(民)68万、[薬師寺道代(み)52万、本村伸子(共)19万、青山光子(社民)10万]
※1議席増確保のため、野党統一候補の擁立調整を

[大阪(4)]
石川博崇(公)86万、北川イッセイ(自)70万、尾立源幸(民主)69万、[岡部まり(民)61万、川平泰三(み)38万、清水忠史(共)36万]
※1議席増を次点の民主で。「戦争は認めない」本音の街・大阪で、共産候補が「落選運動」で2議席目の受皿となり得るか?

[兵庫(3)]
末松信介(自)69万、水岡俊一(民主)51万、[井坂信彦(み)41万、三橋真記(民)40万]
※1議席増を次々点の民主で

[福岡(3)]
大家敏志(自)77万、大久保勉(民)67万、[佐藤正夫(み)28万、堤要(民)17万、篠田清(共)14万]
※1議席増確保のため、野党統一候補の擁立調整を


■その他の複数区「野党共闘で」【最大3議席】

[静岡(2)]
岩井茂樹(自)55万、藤本祐司(民)48万、[河合純一(み)35万、中本奈緒子(民)20万、渡辺浩美(共)9万]
※野党系候補複数擁立で、批判票・比例区の受け皿に

[京都(2)]
二之湯智(自)37万、福山哲郎(民)30万、[成宮真理子(共)18万]
※社・共共闘で革新首長を輩出した土地柄で、自民議席を奪取できるか

[広島(2)]
宮澤洋一(自)54万、柳田稔(民)29万、[中川圭(民)26万]
※“醜聞”自民現職に「落選運動」で迫れるか?


■議席奪取の可能性のある1人区【最大6議席】

《前回、あと一歩》
[栃木(1)]
上野通子(自)32万、[簗瀬進(民)31万]

[沖縄(1)]
島尻安伊子(自民)25万、[狩俣吉正(民)21万]
山形(1)]
岸宏一(自)26万、[梅津庸成(民)22万]

《民・共の共闘で迫る》
[熊本(1)]
松村祥史(自民)39万、[本田浩一(民)34万、安達安人(共)3万]

[香川(1)]
磯崎仁彦(自)23万、[岡内須美子(無)18万、藤田均(共)3万]

[愛媛(1)]
山本順三(自)35万、[岡平知子(民)25万、田中克彦(共)5万]

[長崎(1)]
金子原二郎(自民)34万、[犬塚直史(民)27万、淵瀬栄子(共)2万]

[鹿児島(1)]
野村哲郎(自民)43万、[柿内弘一郎(民)30万、山口陽規(共)5万]


■比例代表での民・共・社の上積みは【最大6議席】

 以上の選挙区情勢だと、“強気”の積み上げでも最大22議席で、過半数割れには6議席足りない。
この分を比例代表改選48議席から上積みするしかない。

過去3回の比例の党派別議席は次のとおり。

[2013]自民:18、公明:7、民主:7、維新:6、共産:5、みんな:4、社民:1

[2010]自民:12、公明:6、民主:16、みんな:7、共産:3、社民:2、たち日:1、改革:1

[2007]自民:14、公明:7、民主:20、共産:3、社民2、新党日本:1、国民新党:1

 民・共・社の過去3回の最大議席[20・5・2]と改選議席の2010年時の議席[16・3・2]とを比較すると、この3党で上積みが可能な議席は最大でも6議席と考えられる。

 以上、選挙区と比例で“強気”の上積みを重ねてやっと、過半数割れの「28議席奪取」に届くことになる。


■維新の「与党化」を無効化する、「新党」の誕生を!!

 ただし、心配なのは維新の参院議席11(改選5(比5))の行方である。

 もともと自民に近い議員が多く、大阪維新の動向もあり、半数以上が与党になびくとの見通しも現実味を帯びている。

 このため、「過半数割れ」を確実にするには、2010年時に7議席を獲得した「みんなの党」のように、既存政党批判の受皿となる、安保法撤回を掲げた「新党」の誕生が不可欠であろう。

 これまで、国会を取り囲み、安保法案「反対」運動に取り組んできた勢力の、「新たな戦い」は「待ったなし」なのである…。 



《資料:2016参院選で改選期を迎える議員一覧》

[選挙区](改選数73)[※2010選挙で次点など議席奪取が期待される野党候補]
北海道(3)長谷川岳(自)徳永エリ(民)[藤川雅司(民)中川賢一(み)]
青森(1)山崎力(自)[波多野里奈(民)]
岩手(1)主濱了(生活)
宮城(1)熊谷大(自)桜井充(民)
秋田(1)石井浩郎(自)[鈴木陽悦(民)]
山形(1)岸宏一(自)[梅津庸成(民)]
福島(1)岩城光英(自)増子輝彦(民)
茨城(2)岡田広(自)郡司彰(民)[ 長塚智広(民)大川成典(み)]
栃木(1)上野通子(自)[簗瀬進(民)]
群馬(1)中曽根弘文(自)[富岡由紀夫(民)]
埼玉(3)関口昌一(自)西田実仁(公)大野元裕(民)[島田智哉子(民)小林司(み)]
千葉(3)猪口邦子(自)水野賢一(み→無) 小西洋之(民)[道あゆみ(民)]
東京(6)竹谷とし子(公)中川雅治(自)松田公太(元気)蓮舫(民)小川敏夫(民)[小池晃(共)山田宏(維)森原秀樹(社)]
神奈川(4)小泉昭男(自)中西健治(み→無) 金子洋一(民)[千葉景子(民)畑野君枝(共)]
山梨(1)輿石東(民)
長野(1)若林健太(自)北澤俊美(民)
新潟(1)中原八一(自)田中直紀(民)
富山(1)野上浩太郎(自)[相本芳彦(民)]
石川(1)岡田直樹(自)[西原啓(民)]
福井(1)山崎正昭(自)[井ノ部航太(民)]
静岡(2)岩井茂樹(自)藤本祐司(民)[河合純一(み)中本奈緒子(民)]
愛知(4)藤川政人(自)斎藤嘉隆(民)安井美沙子(民)[薬師寺道代(み)本村伸子(共)]
岐阜(1)渡辺猛之(自)小見山幸治(民)
三重区(1)芝博一(民)
滋賀(1)林久美子(民)
京都(2)二之湯智(自)福山哲郎(民)[成宮真理子(共)]
大阪(4)石川博崇(公)北川イッセイ(自)尾立源幸(民)[岡部まり(民)川平泰三(み)清水忠史(共)]
奈良(1)前川清成(民)
和歌山(1)鶴保庸介(自)[島久美子(民)]
兵庫(3)末松信介(自)水岡俊一(民主)[井坂信彦(み)、三橋真記(民)]
鳥取・島根(1)浜田和幸(次世代)青木一彦(自)[坂野真理(民)岩田浩岳(民)]
岡山(1)江田五月(民)
広島(2)宮澤洋一(自)柳田稔(民)[中川圭(民)]
山口(1)江島潔(自)[平岡秀夫(無)]
徳島・高知(数1)中西祐介(自)広田一(民)
香川(1)磯崎仁彦(自)[岡内須美子(無)]
愛媛(1)山本順三(自)[岡平知子(民)]
福岡(3)大家敏志(自)大久保勉(民)[佐藤正夫(み)堤要(民)篠田清(共)]
佐賀(1)福岡資麿(自民)[甲木美知子(民)]
長崎(1)金子原二郎(自民)[犬塚直史(民)]
熊本(1)松村祥史(自民)[本田浩一(民)]
大分(1)足立信也(民主)
宮崎(1)松下新平(自民)[渡辺創(民)]
鹿児島(1)野村哲郎(自民)[柿内弘一郎(民)]
沖縄(1)島尻安伊子(自民)[狩俣吉正(民)]

[比例代表](改選数48)
(自民:12)阿達雅志 赤石清美 宇都隆史 片山さつき 小坂憲次 高階恵美子 藤井基之 水落敏栄 三原じゅん子 山谷えり子 脇雅史 堀内恒夫
(公明:6)秋野公造 長沢広明 横山信一 谷合正明 浜田昌良 荒木清寛
(元気:1)山田太郎
(次世代:1)江口克彦
(新党改革:1)荒井広幸
(無所属:1)田中茂
(維新:5)片山虎之助 柴田巧

     寺田典城 小野次郎 真山勇一
(民主:15)有田芳生 石橋通宏 江崎孝 加藤敏幸 小林正夫 田城郁 津田弥太郎 那谷屋正義 直嶋正行 難波奨二 西村正美 白眞勲 藤末健三 前田武志 柳澤光美
(共産:3)市田忠義 田村智子 大門実紀史
(社民:2)福島瑞穂 吉田忠智
(生活:1)谷亮子



  • 昔韓国ソウルの落選運動の本部を訪れたことがあります。そこで気が付いたのは、裁判官も対象にしていたことです。権力にへつらうような裁判官のデータを集めてやめさせる運動も必要ではないでしょうか。 --- 神野武美 (2015/10/08 09:47:10)
  • とても参考になる力作ありがとうございます。Facebookで紹介笹ていただきたいと思います。 --- 江口 征男 (2015/10/19 13:43:02)

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  • 最終更新:2015-09-21 19:34:24

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