『厳重な抗議』の先が見えない=横田基地・部品落下紛失事故= 佐藤栖宇弥

 今年に入り、横田基地所属のC-130航空機で部品落下による紛失事故が続いている。
 これまでにも同様の事故は続いていたが、昨年7月に同様の事故が起こった際、横田基地は「航空安全については、特に重点をおいている」「安全は最優先事項」などと話していた。
 にもかかわらず再び、部品落下による紛失事故が、相次いで発生してしまった。

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 今年3月25日、C-130航空機訓練後の点検時に7.62cm×12.7cmのアルミ製パネルの紛失が、そして翌26日には、同型航空機の点検時に長さ18.29mのアンテナ(重さ4.5kg)の紛失がそれぞれ発覚した。
 5月28日、都の担当者や周辺地域副市長などに対し、米軍の整備士より2件の事故報告が行なわれている。(下記記事補足参照)
 その直後の6月3日、同型航空機で、こんどは5cm×1.8cmのアルミ製のラッチ(パネルを留めるための掛け金)の紛失を整備員が発見された。この事故に関して、横田基地は「(6月末現在で)紛失された正確な時間と場所はまだはっきりと分かっていません」「主な飛行ルートは海上と人口が少ない地域でした」としている。
 3件の紛失部品について、横田基地を管轄する北関東防衛局によると、7月10日時点で、「見つかったという報告は入っていません」(同局報道官)とのことである。

 横田基地は3件の事故を受け、「チーム横田は、安全を最優先し航空運用を行っており、これらの件については真摯に受け止めております。今後も安全を最優先に航空運用に努めてまいります。日米両国の防衛の任務を支援すべく、皆様のご理解に心より感謝いたします」(広報)とコメントしている。

 また横田基地は、今年に入って起こった3件の紛失事故の原因について、「(3件の事故は)異なる航空機です」「いずれも部品の故障に起因するもの」と説明し、米防総省予算の削減と相次ぐ事故との関連については明確に否定した。

 3月と6月の事故は、事故後の対応に違いがみられる。
 横田基地によると、3月に発生した2件の紛失が連続して発覚した直後、マーク・オーガスト第374空輸航空団司令官(当時)は、「整備群と運用群に対し、飛行前、飛行後整備・点検にかかわるすべての技術説明書、操作説明書の再確認と全ての同型航空機の点検を指示」している一方、6月の部品紛失発覚後は、すべてのC-130航空機点検と整備のみ行われ、運行を再開しているようだ。
 また、事故報告の時期は、3月の事故については5月28日に行われた(前述)のに対し、6月にあった事故の報告は事故発生当日に行われている。

 横田基地に所属する航空機はC-130の他、C―12(プロペラ機)、UH-1(ヘリコプター)の2種類がある(なお、所属している航空機の数については非公開とのこと)。
なぜ相次ぐ部品紛失事故がC-130ばかりで発生するのか。横田基地は、「(C-130は)とても信頼できる航空機です。それぞれの事故に関連性はなく、横田基地所属の航空機の傾向というものではありません」と、明確な回答を避けた。
(昨年7月の部品紛失事故も、C-130であった)

 事故が相次ぐ中、東京都や関連各局の対応はどうかといえば、抗議以外の方法はないようだ。
 北関東防衛局は、「事故防止策などについては米軍が作成するものであり、当局としては、再発防止に向けての要請を行なっています、ということです」(前出報道官)とだけ話し、それ以外の回答は出てこなかった。
 また、3月の事故後、舛添要一東京都知事は「(事故を受けて)横田基地周辺の住民が安全に生活するというところで都がどのようにかかわっていくか」という記者佐藤からの質問に対し、「こういう事故はあってはならないことであって、それはきちんと抗議をする」「これまでも厳しく抗議を周辺の皆様方とやってきたんで、今回も同じようなことをやっていくということで。 それは今後とも厳しい態度は維持して、厳正に対処してもらいたいということはつなぎたい」(今年4月4日都知事定例会見)と話していた。

 なお、訓練中の部品落下事故で国民が被害を受けた場合、被害者への補償や加害者への対応は日米地位協定17条および18条で行なうことになる。これは、事故により被害が発生した場合、日本国民の税金でその補償を行ない、責任者や行為者に対する刑事訴追の第一裁判権は米軍にもっていかれるということである。(該当条文については、文末<参考>を参照)

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 事故と抗議のいたちごっこがいつまでも続けば、横田基地だけでなく周辺地域の行政に対する不信感にもつながってくるであろう。
 万一でも、『防衛の任務を果たすはずが、訓練中に部品を落として周辺住民に被害を与えました』となった時、都や関係局などがこれまで行なってきた『厳重な抗議』は無意味なアピールに過ぎなかったことが明らかになる。
 ほぼ毎年のように部品の落下紛失事故が起こっている中、ここまで周辺住民に被害が及んでないのは、『不幸中の幸い』に過ぎないということを、関係者はどれくらい認識しているのか。




(参考)日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく
施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定<日米地位協定>

17条
3 裁判権を行使する権利が競合する場合には、次の規定が適用される。
(a) 合衆国の軍当局は、次の罪については、合衆国軍隊の構成員又は軍属に対して裁判権を行使する第一次の権利を有する。
(ii) 公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪

18条
5 公務執行中の合衆国軍隊の構成員若しくは被用者の作為若しくは不作為又は合衆国軍隊が法律上責任を有するその他の作為、不作為若しくは事故で、日本国において日本国政府以外の第三者に損害を与えたものから生ずる請求権(契約による請求権及び6又は7の規定の適用を受ける請求権を除く。)は、日本国が次の規定に従つて処理する。

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(訂正と記事補足:7月23日)

 3月の部品紛失事故の日付は、当初の記載では1回目が26日、2回目が27日としておりましたが、正しくは1回目が25日、2回目が26日です。
 また、3月25日に紛失したアルミ製パネルの大きさは、当初の記載では62×12.7cmとしておりましたが、正しくは7.62×12.7cmです。
 上記3箇所につき、訂正を入れました。関係者および読者の皆様にお詫び申し上げます。

 また、本記事掲載(7月20日)後、3月の事故における初期の地元自治体への連絡は3月27日に横田基地広報部より横田防衛事務所を通じて行っており、5月20日に行われた報告は、3月27日に報告した状況を基地内でさらに詳しく説明した機会である、と横田基地広報部より連絡がありました。
 ここに記事補足として追加致します。



  • 最終更新:2014-07-23 13:26:17

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