よくやった? “無視”の中での「脱原発」 成瀬裕史
■とうとう“風”は吹かず
東京都知事選は、メディアの下馬評どおり、舛添氏の“圧勝”(?)で終わった。
確定得票数は、舛添氏 2,112,979票、宇都宮氏 982,594票、細川氏 956,063票だった。
「脱原発」のワンイシューで臨んだ細川・小泉陣営が期待した“風”は、とうとう「吹かず」に終わった…。
投票率は衆院選と同時だった前回(H24.12.16)の62.60%(有権者数10,619,652人)を大きく下回る46.14%(同10,685,343人)で、約172万票が減ったことになる。
舛添氏と細川氏の得票の差は約116万票。投票率が60%を超えると「何かが起きる」と言われていたが、この差を埋める“浮動票”は、最後まで「動かなかった」ようだ…。
■厚い“組織票”の壁
投票率が低くなる程、“組織票”の強い候補が「有利」といわれるが、共産、社民、緑の党、新社会党推薦の宇都宮氏は、投票率の高かった前回選挙の得票 968,960票とほぼ同じ票を獲得している。
トップ当選した自民(東京都連)、公明支援の舛添氏の得票は、前々回(H23.4.10 投票率57.80%)の都議会自民、公明推薦の石原慎太郎氏の得票 2,615,120票は下回ったが、得票率43.30%は、奇しくも一致している。
やはり、組織票を持たない候補が「勝利」するためには、1千万を超える東京都の有権者の1割・百万票以上の浮動票が“必要”となる。
逆に言うと、組織票を持たない細川候補を「勝たせない」ためには、この“浮動票”を極力「動かさない」戦略が必要である。
これが、今回、マスメディアで徹底された、小泉前首相を「写さない」、脱原発を「話題にしない」という、“無視”を決め込む戦略(?)であろう…。
■「脱原発」に“無視”を決め込んだメディア
「ライト」な首相が“盟友”(?)を経営委員や会長に送り込んだNHKでは、ラジオ放送で都知事選が終わるまで「脱原発」を話題にしないよう要請があったことを複数の出演者が「告発」。
2月5日の参院予算委でも、籾井NHK会長の参考人招致で取り上げられた。
このような「情勢」の中、民法も「劇場型・ワイドショー」の“元祖”小泉氏の動静を完全に「無視」。
メディアに大々的に取り上げられることにより、「郵政選挙」の再来を狙った細川・小泉陣営の“戦略”は、最後まで「不発」に終わった…。
(ちなみに、ネットで「首相動静」を確認すると、2月3日には毎日新聞社社長と(1月29日には鳩山邦夫氏と!!)“会食”している…。)
2月2日の細川氏の銀座での街頭演説では2万人の聴衆で埋まったようだが、ネット以外で報道されることはなかった…。
■「ワイドショー政治」には未だあった「報道の自由」?
このメディア側の「無視」は、2010年の民主党代表選での「悪党」小沢氏に対する報道を“想起”させる…。
我が国のメディアにとって、現政権の“ご意向”に「逆らう」ということは、もはや「不可能」になってしまったのであろうか…。
後に「ワイドショー政治」と揶揄されはしたが、小泉氏が勝利した自民総裁選のあった2001年当時は、未だ「報道の自由」があったのかもしれない…。
■これからも続く「脱原発」の陣
しかし、今回の都知事選では、“徹底無視”という「メディアスクラム」による“低投票率”によって敗れはしたものの、
組織票を持たない中で、約百万票・約2割の得票率を獲得した細川氏の「脱原発」は、日本の中心・東京にあって、しっかりと「地歩を築いた」といえるのではなかろうか…?
2月14日には首相のお膝元、山口県知事選挙(2月23日投開票)が告示される。
前回(H24.7.29)は自公推薦の候補に、「反原発」候補が“惜敗”している。
地方選による「脱原発」の陣は続く…。
- 最終更新:2014-02-12 23:23:02