ケータイ・スケッチ ~路傍の季~ したたかに・・・ 三国 章
気をもむ一本の桜の木がある。
それなりに、今年も花をつけた。
(撮影:2014.04.17 宝塚市内 三国章)
拙宅と中学校をへだてる道沿いの土手は桜並木となっている。
ソメイヨシノと八重桜が交互に場をはっており、
前者は早や葉をまといはじめているが、
八重は目いっぱいにピンクの花房を抱いている。
庭師の智恵であろうが、
いっときの間をおいて二つの桜が盛りを競い、
長く桜を楽しめる趣向である。
(撮影:同上)
さて、くだんの桜のことである。
土手は中学校の校庭にむかってかなりの傾斜となっており、
一本の桜の木が、つんのめるように校庭側に倒れ込んでいる。
八重桜である。
(撮影:同上)
何年前のことであったか、
そして、どうしてであったかは、おぼつかないのだが、
倒れた桜は、根をさらけ出して無残な様であった。
たぶん、傾斜に流されて土が浅くなり、
根の張りが弱かったのであろう。
ために、強い風にあおられて踏んばりがきかなかったのであろうか。
(撮影:同上)
いずれかの方が、そのうち撤去するのであろうと思っていたが、
相違して、そのまゝとなってきた。
根もとの太さは、メタボ気味のボクの胴回りほどで、
丈は5~6メートルはあろうか。
葉を落として倒れこんだ冬時分の姿は、
まさに朽ち果てた倒木の態である。
「もう、あかんやろうなぁ・・・」という思いが、
春先、この桜へよせる常であった。
が、ぶかっこうなまゝとはいえ、他に伍して花を咲かせてきた。
たがわず、今年もいのちの証を立ててくれた。
(撮影:同上)
道沿いの金網フェンスを乗り越えて、よくよく眺めて見る。
根のあたりは一部がいびつに砕けて腐食している。
樹皮の深い裂け目は、この桜に刻まれた生きざまであろう。
だが、根っこは、なお、しっかりと土手をわしづかみしている。
多くはないであろう滋養分をむさぼり、
枝先にむけ、けなげに送りつづけている。
この桜、したたかにありつづけるだろう。
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- 最終更新:2014-04-20 11:45:16