初の海外都市救助隊参加~東京消防庁出初式~ 佐藤栖宇弥

 2015年1月6日、東京ビッグサイトで東京消防庁出初式が行われた。
 今回の出初式では、初めて海外都市からソウル消防災難本部(韓国・ソウル特別市)救助隊員4名が参加し、東京消防庁の消防救助機動部隊と連携し救出救護活動の演技を行なった。
 また、柳興洙(ユ・フンス)駐日韓国大使が来賓として出席した。

☆海外都市参加の意図
 東京消防庁出初式は歴史のある伝統行事(*1)であり、これまで海外都市の救助隊が参加したことはなかった。
 東京消防庁は、今回初めて海外都市からの参加を決めた意図について、円滑な救助活動のために海外都市の消防隊と東京消防庁の救助隊員の間で『顔の見える関係』の構築を強化することと、技術交流を行なっている海外の救助隊との連携の様子を都民の皆様にみてもらうこと、の2つであると説明した。

 『顔の見える関係』を構築する必要性について、2008年の四川地震の救助活動時に東京消防庁から派遣された救助隊の経験があるという。
 「救助現場でうちが派遣した隊員と顔見知りの救助隊員が現地にいて、救助活動がスムーズに進んだと聞いています」(東京消防庁出初式担当職員)
また、地震や津波などによる自然災害による応援要請の増加に伴い、最近は海外都市と技術交流を含めた共同訓練をする機会は増えている。
 「東京消防庁としてそのような活動をアピールする場は、かなり限られています。夏の都総合防災訓練も主催は東京都で、うちは参加する立場でしたから。そこで今回、都民の皆さんに共同訓練の様子を見てもらえればと思いました」(同職員)

☆参加依頼は4都市へ
 東京消防庁は昨年10月、4都市に対して、2015年出初式に参加を依頼した。
 東京消防庁は「オブザーバーも含んだアジア大都市ネットワーク21(以下、アジネット)会員都市のうち、直近の合同訓練などで、当庁との合同訓練の経験のある都市」(同職員)と選定基準を説明。昨年8月の東京都総合防災訓練に参加したソウル特別市(韓国)新北、台北(共に台湾)と、10月にアジネット共同事業の一環として東京で行われた共同訓練に参加したハノイ市(ベトナム)を選定して、東京消防庁から各都市の消防防災当局へ参加依頼を出したようだ。
なお、柳大使の来賓について、東京消防庁は取材当初、来賓決定への関与を否定していたが、その後、  「毎年、他国含めて駐日大使館に招待状を送っていたが、これまではどなたも参加されたことはなかった。ところが今回、駐日韓国大使館から柳大使が参加するという話が来た」(同職員)と説明を変更した。

☆ソウル救助隊員の費用負担
 今回、合同訓練に参加したソウル救助隊員における渡航・滞在費用の負担について、舛添要一東京都知事は「詳細は分からない」(今年1月13日都知事定例会見)と明言を避け、都政策企画局職員も「出初め式の主催は東京消防庁であり、東京都は協賛なども行なっていないため、出してないと思う」と話していた。
 東京消防庁が参加依頼を出した際、「4都市に対して参加費用を各都市に負担をしてもらう旨を盛り込んでありました。依頼は出しましたが、参加してもらうにはかなり無理な条件だと思っていました。むしろ、ソウル特別市から参加の返事が来たのは意外でした」(出初式担当職員)と話している。
これらの話からすると、東京都はソウル救助隊員に関する費用を支払っていないようだ。
なお、東京消防庁は金額については明らかにしなかったものの、通訳委託費のみ、負担を認めた。

 一方、そうなるとソウル消防災難本部は、海外都市より依頼のあったイベントに参加するため、自分たちが隊員の出張費用を負担しなければならないわけである。
 出初式で行なっている消防訓練演技は、リハーサルを行なった上で集まった人たちに見せる、いわば“パフォーマンスの場”に過ぎず、普段の訓練とは異なる。
 そういう意味で、ソウル側にとって今回、“自腹”でのイベント参加はどのようなメリットがあったのか。
 今回の件につき、東京消防庁を通じてソウル消防災難本部に取材依頼を出しているが、本稿締め時点で返事は来ていない。

☆日韓国交正常化50周年との関連
 今回のソウル救助隊員の参加について、舛添都知事が「(各分野で)ものすごいレベルの技術交流をやっていますので、事務レベルのそういうことの一環」(1月13日会見)と話す一方で、自身のブログにおいて「日韓国交正常化50周年であり、この機会に膠着した日韓関係を少しでも改善させる糸口を」(2015年1月13日)(*2)と綴っている。
 今回のソウル救助隊員が参加した出初式を、日韓国交正常化50周年とリンクさせたいようだ。
 しかし、東京消防庁でソウル特別市しか出初式に参加しなかったことと日韓国交正常化50周年との関連について質問をすると、取材に対応した2名の職員は「次元が違う」と共に一笑に付して、明確に否定した。
 そうすると舛添都知事は、今回参加したのがソウル特別市だけだったという「結果」を、自らが掲げる日韓関係の改善のため、一方的に利用したかっただけというところか。

☆成果と今後
 今回の海外救助隊参加の成果について、一定のアピールが出来たものの、その成果は「実際に災害が起こった時に分かること」と、今後の災害現場で反映されることを強調した。
 また、来年以降の海外救助隊の招待について東京消防庁では、「今年の出初式のアンケートや都民の声を聞きながら、今後、検討していきます」(以上、出初式担当職員)とのこと。



 「私たちは粛々と人助けをするだけです」「消防機関においては、国内外で大規模災害が発生した場合の人命救助に国境はありません」(消防関係者)と話す通り、少なくとも消防の現場では、都市を超え、甚大な災害を想定した訓練が滞りなく進んでいるようだ。

 一方で、ソウル救助隊の参加に舛添都知事の関与を疑う話があるようだが、東京消防庁のコメントを聞く限りでは、今回に限っては、そのようなことはないようだ。
 ただ、舛添都知事の、都市外交をもって国交に踏み込むような、また、知事自身の親韓(傾韓)を思わせるような、これまでの相次ぐ言動から考えると、個人的な意向での関与を疑われるのはやむを得ないだろう。



<以上>

(なお、2月1日の朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル特別市長来日に合わせ、舛添都知事は3日に朴市長との会談を予定している)



*1『東京消防庁 <消防雑学辞典>』http://www.tfd.metro.tokyo.jp/libr/qa/qa_25.htm
*2現代ビジネス【舛添都知事日記】『古い政策を捨て、新規政策を多く盛り込み、東京を世界一の街にするための予算編成を!』より http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41715



  • 最終更新:2015-01-31 00:42:20

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